2023年9月4日月曜日

煙突もりの隠れ竜 (ネタバレあり)

無事全公演終了したので、煙突もりの隠れ竜のネタバレありの感想。

本作の主題は、人間と幻獣という異なる種族の共存。両者とも言葉を操る知性はあるのだけれど、言語が違うので基本的に話は通じない。それは主人公の人間・チョーチ(ルイージw)も例外ではなく、一緒にいる化けたぬきの幻獣・守とも、何となくのコミュニケーションしかできない。劇中の大半は幻獣側の視点から表現されており、我々観客はチョーチが何を言っているのか基本的に分からない。

…とは言え、劇中で明確に幻獣との武力抗争を望んでいるネームド人間キャラはロケッツのみ。人間側の代表であるガジャタ=ラミンに至っては、むしろ親幻獣派。幻獣側もことさら争いは望んでおらず、最も武闘派であるキマイラも、元々は幻獣の領域を犯す人間に手を出すだけだった。なので、ロケッツという身勝手な人間が1人で争いの火種を起こし、燃え広がらせた諸悪の根源のような扱いとなっている。

が、ではロケッツが余計なことをしなければ万事うまくいっていたか? あえてたらればを言うと、そんなに甘くなかっただろうと思う。ガジャタ=ラミンの理想は高潔ではあるけれど、現実にはまだフィットしない。人間と幻獣の融和は、長い時間をかけて相互理解を深めた先に、ようやく得られるのだろう。劇中では大きな争いを経て、ひとまず不可侵協定を落とし所としたわけだけど、ロケッツの策謀がなかったとしても、いずれそうなっていたのではなかろうか。劇中の反幻獣派のモブの存在からも、いきなり仲良くせいと無理矢理握手を強要したところで、そう簡単に本心は変えられまい。ポリコレの押し付けが反感を買っているように、ね。

最終的にチョーチは、生き物の負の感情から生まれる煤を払う役割から解放されたわけだけど、この先の煤払いはどうするのか? 黒竜による強制リセットは回避したものの、煙突森の小さな幻獣でも払えるくらいの煤の量に抑えられるよう、人間も幻獣も良い世界を作れるものだと信じたい。

最後に、幻獣のいる劇の世界から戻ってきたところで、自分もドーナツを買って食べたとさ。

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