僕にだけやさしい古書室/兄と妹の感想。全公演終えたので、遠慮なくネタバレする。
まずは兄と妹。
兄はどうしてあそこまで血縁のない妹・夏に尽くしたのか? 正解は語られていないけど、きっかけはゴミ屑な実父を全否定するために、実父のネグレクトと真逆なことをやりたかったのではなかろうか。
ただ、実践しているうちに愛情を覚えるようになり、やがて心の支えや癒しになった、と。実父から受けた呪いをようやく、ポジティブな感情に昇華できるようになったのだろうと思ったのに…。人知れず、夏にも知られず、実父と物理的に刺し違える最期となってしまった。実父のあまりに強烈な呪いは、死ぬまで解けなかったわけだ。
そして、兄にとっては死して決着をつけたつもりかもしれないけど、生き残っている夏にとっては、過剰なまでに愛してくれた兄の喪失という、大きすぎる傷を負うことになるはずだ。正直、そんなことまで思慮が及ばないほど追い込まれているようには見えたけど、せめて夏の婚約者が、それを癒してくれるだけの男だと見込んだのだと思いたい。
家族構成は明確に語られなかったけど、夏が実母と2人で暮らしていたところに、ゴミ父が兄を連れて転がり込んできたのかな。ラーメン屋のバイトの件で、兄は土地勘がないようだったし。安井姓がどちらの家庭由来かは不明。
続いて僕にだけやさしい古書室。
初見ではかなり終盤まで、人間ではないことに気づかなかった。男手一つで捨て子を育てるとか、しかも留守番をさせるとか、無理にも程があるだろうと思っているうちに大きく育ち、また大きく育ち、そして寿命を迎えて医者の所見を聞いたあたりでようやく、ああ動物だったのか、と。そこから振り返って、1人で風呂に入れないという件を思い出し、犬だったのかな。…と思っていたら、20日ソワレのアフタートークで猫だと明かされたw 開演前に最後まで読み切れなかったパンフレットにも、思いっきり猫だと書いてあったわ。
そのアフタートークによると、古書室とはカズマが雪と過ごした部屋のことだった模様。タイトルにある割に古書室のシーンが少なくなってしまったそうだから、転居後の方かな。また、実は小池さんもカズマと同じく動物の言葉が分かるという裏設定があったらしいけど、これは正直分からなかった。小池さんが動物と関わるシーンもなかったし。
さて、猫だと知った上でもう一度見ると、なるほど確かに、捨て子を見た婦警さんの「あーはいはい」っぽい反応からして、人間ではなかった。鳴き声が人間の赤ん坊のものだった点に関しても、動物の言葉が分かるカズマにはそう聞こえたのだろう。子猫であればケージに入れて留守番させておくこともできそうだし、ペット禁止のアパートで猫を飼ったら、追い出されても仕方ない。ただ、育児の本でミスリードを補強したのは、反則ギリギリの線を少し踏み越えていたかな。
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