2023年10月31日火曜日

BORDER〜罪の道〜 (ネタバレあり)

BORDER〜罪の道〜を観劇してきた。全公演終了したので、以下ネタバレは気にしない感想。

刑務所を舞台とした女囚モノ。人として越えてはならない一線を越えてはいない囚人と、悠に越えてしまった囚人。そして越えてしまいそうな犯罪被害者の遺族の物語。罪が軽めの囚人と看守のコメディで始まったので、軽いノリで楽しめる話なのかと思いきや…。

主人公の新人看守・彩香は婚約者の仇である死刑囚・猪塚を自らの手で殺そうと企て、一方の猪塚はその殺意を利用して、絞首台ではなく直接人の手で殺されることを企てる。いや、仇討ちをしたいという気持ちは十分理解できるけど、猪塚の殺されたい願望に関しては、正直なところ感情移入できなかった。不幸な生い立ち故に死にたくなるけど、怖くて自死できない。だから殺してくれと願うところまではまだ分からないこともないけど、自分を殺してくれない人を殺しまくるというのは…。とても共感できなくなるくらい壊れてしまった人の成れの果てとして、一片の同情の余地だけはあったのか?

物語は結局、彩香が手を汚すことなく猪塚の死刑執行で幕を閉じたのだけれど、最後に彩香が猪塚にかけた「次、生まれてくる時は友人として会おう」という言葉は、額面通りに受け取ることができなかった。とてもではないけど許すことなどできない猪塚に対して、一線を越えずに踏みとどまった別種の人であることを思い知らせるためのわざとらしい優等生発言。猪塚の「無理しちゃって」も、それを分かっての返しだったのだろう。

BORDERというタイトルは、直接的には殺人という一線のことだろう。また、劇中で着ている人はいなかったけど、囚人服の横縞。あと、品川と茜の一線を越えた禁断のイチャイチャw しかし何より、今回あまりに救いのない話をやったこと自体が、劇団が攻めた最も際どい一線だったのではなかろうか。

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