演劇SOULの1日のチーム翼と、4日マチネのチーム魂の公演を見た感想を。全公演終了したのでネタバレは一切気にしない。
まずメインは、大将の秀光を亡くした小料理屋の物語。味を継承できない以上、女将さんの真由美は店を畳もうと考えているのだけれど、地縛霊になりかけている秀光は、どうにか店を続けてほしいと思っている。死者である秀光は生者の世界に干渉できず、見ていることしかできない。そんな生者と死者のコミカルなすれ違いという糖衣で重たい話を飲み込ませておいて、終盤でしんみりさせる展開が上手かった。
店の存続のキーパーソンとなった高槻は、本当によく腐らなかった。理不尽に首を切られたなら、恨みを抱いたとしても、それは順当なものだろう。にもかかわらず、恨むどころか最後まで濡れ衣を着たまま店の存続に協力する聖人っぷり。ただ盗みは無実でも、大恩ある秀光に対して真由美に惚れてしまったというより大きな背信の自覚があったからこそ、理不尽だとは思っていなかったのかもしれない。
「いわ」の続きを高槻が補完した件ではロンダリングのラストを思い出したけど、そんな嘘に気付くほど真由美の気持ちは秀光に向いていた。結局のところ、秀光の嫉妬は盛大な空振りだったわけだ。まあ、高槻を許して過去を清算した上で、改めて下手から助力を願う真由美の器を見せられたら、2人の男どちらにも共感できてしまうのだが。
…そんな小料理屋の話だけなら正直、秀光に少しだけ力を貸してくれる天使がいれば成立しただろう。天使について深く掘り下げなくても、不思議な力は「天使だから」で押し切ることもできた。なのにわざわざ過去と現在、この世とあの世を行ったり来たりして話を複雑にしてまで輪廻を描いたのは、それが真の主題だったからではないだろうか。
この作品において一般的(?)な魂の定義に近いものは精霊と呼ばれており、「愛・受容・希望を人はをソウルと呼ぶ」としている。DNAを元に作られる肉体と同様もそこに宿る精霊も、いずれも生命の構成要素の1つであって、発露される感情こそがソウルである、と。
もう1つ大きな点は、生まれ変わる前に前世の記憶を消去すること。記憶こそが自分を自分たらしめている主体ではないのか。記憶を継承できなければ、例え前世と同じ精霊が宿っていたとしても、それは別人だと思う。
来世があろうとなかろうと、今世の想いは今世のうちに、だな。
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