2024年12月10日火曜日

シバイノツクリカタ (ネタバレあり)

シバイノツクリカタの感想。全公演を終えたので、遠慮なくネタバレする。

これは陽子の覚悟と誠意の物語だった。

巻き込まれた深鴨と6人とは違って、陽子は今回の事を明確に起こそうとして起こした。動機は明確で、家族を救うため。そしてその家族の中には姉の響子と姪の莉央だけでなく、義兄の深鴨も含まれていた。

しかし、動機が悪くなければ、そのために6人と商店街組合を利用した手段が正当化されるわけではない。そのことは陽子自身が冒頭で「これが一番正しかったかどうか、確信はない」と語っているとおり、十分すぎるほど自覚している。そして、あれだけ周到に用意する計画力がある以上、重みもリスクも分からなかったはずがない。深鴨と6人に対しては過去の重荷を清算させて救済しようとしながら、自分だけは新たに業を背負う覚悟を決めていたに違いない。

では、深鴨意外の6人は単なる駒として計算していたのだろうか? もちろん、何よりもまず計画に必要な人材を求めたのだろうけど、「皆さんのお芝居をまた見たかった」というのも、調査を進めていくうちに芽生えた本音だったのではないかと思う。全員を救済しようと尽くしたのは、騙し討ちのような形で巻き込んでしまう彼らに対する、陽子なりのせめてもの誠意だろう。

最終的には陽子の企て通り、7人は変わるきっかけを得られたわけだけど、朽葉月と芹原が和解したときには「まだ見ぬ夏」のリベンジをする流れになるのかと思った。深鴨もいることだし。ただ、時間の制約上そうはならない計算だったのかな。最終的には深鴨の真実を劇にするつもりなのに、クツハツ一座解散の事実を劇にしようとか、しれっと撒き餌の提案をしたりもしてるんだよな。つくづくやり手だ。

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